SSブログ

BAR chapter 2 [小説風にハマってます]

周司は初老、いや老人と言った方が、あてはまる男性と二人で居酒屋にいた。その居酒屋は最近できたと記憶しているが、
正確的には思いだせない。店内に入ると圧倒的に回りがうるさく、やや居心地の悪さを感じていた。
周司の正面に座っている老人は大手企業の元部長だった。だいぶ前に定年を迎え、独立して仕事をしている。
老人と、周司とは彼が現役の頃、仕事関係でつきあっていたが、今では二人の間に特に利害関係はない。
誘われたのは周司の方だっが店は周司が選んだ。場が違ったかなと後悔の念が沸き始めたが、メニューに
久保田の万寿や八海山大吟醸が載っていたので、少し救われた気分になっていった。
老人は「墓を買ったんだよ」とうれしそうに話を始めた。
「墓」?周司は短い単語で聞きなおした。
はっきりいって周司にはまったく興味のない話で、しかも何の予備知識も持ち合わせていない。
そんな周司におかまいも無く延々と延々とハカの話を続ける。
口調は穏やかであり、威圧的な所はまったくなく、歳のだいぶ離れた周司に対し敬語であり
それが人の良さを際立たせていた。
老人はスーツにネクタイ、白髪の髪は綺麗に7:3に分かれ品の良さも持ち合わせている。
周司はCOOLBIZスタイルだったので、老人にネクタイをはずしたらどうかを提案したが
老人は否定し、ハカの話を続ける。
老人にとってはハカは一大イベントだったのだろうと周司は理解する事にして、聞き入れる態勢を
作りながらも、ある思いがふつふつと胸の奥からわき上がる何かを感じていた。
店の喧騒も気にならなくなり、少し後悔して入った事など、すっかり忘れている。
周司のふつふつとした何かが時間の経過と共に形になってきはじめた。
こういう事なんだ。勝手に解釈を進める。
老人はハカを作った事により自分自身で時間を特定し決意したのだろう。
ハカまでのこれからの道は正しいであろう一本の道で、もう迷うべく道は存在しない。
まっすぐにその道を歩いていく。
老人には自分が幸せであっただろう人生に対し長かった時間を山の上から見渡せるような位置にいる事を理解しているのである。
周司は質問したい衝動に駆られた。
あなたは長く生きてきた記憶の中で、ただ一つだけの出来事の記憶をハカに持っていけるとしたら
何を選びますか?
それは、周司が老人より若い優越感からきた物ではなく、周司にも間違いなくやってくるその時に
対して何を思うのか、とても興味深くなってきたからである。
周司は老人の楽しそうに続ける会話をさえぎった
<中略>
店を出て、老人と挨拶をすませた周司は駅方向に一人歩き始めた。2分で着いてしまうだろう距離だ。
BARに行こうか、どうかを考えた。
BARに行かなければならない理由は前回と違い、今日はまったく思いつかない。
周司はどうしようかを考え、瞬時に決めた
短い駅まで歩いている間にタクシーが来たら、BARに行こう。来なかったら帰ろう。周司は自分の行動を偶然にまかせる事にした。
振り返ると、やや遠くの方から車のヘッドライトの明かりと、その車の右サイドのフロントガラスに赤いボンヤリとした光があった。
なんの迷いもなく周司は右手を挙げていた。ぼんやりした赤い光は「空車」とくっきり読める距離までに近づいてきて、滑らかに止まった。
「やっぱりか」と周司はつぶやく。
BARの前にいくと、前回とは違い 店の前は小さい光をたくさん散りばめて夜の装飾を作り出していた。
もちろん、店に続く2階への階段は明るく、ウェルカムの雰囲気を健全にアピールしている。
周司はドアを開けた。

BAR chapter 1 [小説風にハマってます]

BAR
周司は2件目を飲み終えると、なんの疑いも持たず
3件目のバーに向かった。
バーの外の電気は消え、2階に行く階段は暗く、普通であったら
行く事をためらう雰囲気をかもし出している。
周司はそんな事はおかまいもなく、入店する。
外の静けさと暗さに対し、店内は明るく和やかな空気が漂っていた。
だいぶ酔っている周司はいすに腰掛け、今日来た目的を
達せられるかを考えてた。
バーのママは普段通り 目線をこちらに向け微笑んでいる。
その目は特別、好意的な目でもなく、かといって迷惑そうな目でもない。
こういった時は、営業的な目線と考えればよいのだが、周司はそんな
感じも受けなかった。
バーのママはいつも通りの手順で急がしそうでもなく、淡淡と1杯の水を
さし出した。
出された水を少し含んだ後、周司はおもむろに口を開いた。
「クラブにいってきたんだ」
今日来た目的とまったく違う会話を始める。
<中略>
朝、ホテルで目覚めた。そのホテルは中流クラスで度々、周司が
行っている場所だ。
そういえば、昨日、チェックインするとき、もう顔を覚えられているフロントの
女性に、「いつも、大変ですね」と声をかけられた。
周司は困ったような顔し、「うん」と返した。それ以上何も思い浮かばなかったし、
そう大変なんだとフロントの女性に言ったとしても、何の意味も持たない事を
直感的に思っていたのかもしれない。
ホテルを出ると突然、強い日差しが周司の体全身を容赦なく包み込んだ。
「長く辛い一日になるなぁー」ポツリ独り言が出る。
重い体を引きずるように動かし、ポケットから比較的新しいメガネを取り出して
かけた。
このメガネは俺の仮面なんだ。自分に言い聞かせる感じでメガネのセンターを指で
軽く押し、周司はまた重い体を一歩踏み出した。
※この作品は基本的にノンフィクションですが登場人物は仮名です(ウケノシ)

nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。